契約不適合責任のポイント
○中古住宅では、「現況有姿」での取引が大原則
☆現況有姿= 現状あるがままの状態
キズや汚れなどもすべてそのままで引き渡すこと
付帯する設備についても売主は契約不適合責任を負いません
「残していくけど、壊れても知らないよ」ということです
自然劣化、経年劣化、老朽化による傾きなども含みます
☆契約不適合責任=契約内容に適合しない場合の売主の責任
目的物が契約内容に合致しているかどうかが問われる
☆契約不適合責任 =瑕疵担保責任 はおおむね同義
*従来の瑕疵担保責任よりも話が単純化・明確化されており、
単に契約の内容と異なるものを売却したときは、売主に
責任が及ぶということ
あくまで、契約書に書かれている内容と合致しているか、
どうかが問題
*隠れた瑕疵かどうかは関係ない
◎「隠れているか、いないか」ではなく「書かれているか、いないか」が問われる
(例) 雨漏りが発生している場合には、「雨漏りが発生している」ことをはっきりと
契約書に明記し、買主が同意していれば、それが契約内容となり、責任は
問われない=契約不適合責任に該当しない
〇注意点・ポイント
*契約書の特約・容認事項を細かくしっかり丁寧に記載することが重要
=物件の状況を 契約書にしっかり書き込む
*売主は、気になることはすべて容認事項に書き出し、契約書と物件の現状を適合
させることが重要
☆容認事項=物件のここが壊れているけど、了解してくださいということ
*「物件状況告知書」と「付帯設備表」の記載が、今まで以上に重要
記載内容が不足していると、それが契約書に反映され、そのまま売却すれば
契約不適合の状態となるということです。
(例) 自然損耗・経年変化が、契約不適合責任に該当しないことを確認しておくことは
有効 特に「付帯設備の故障や不具合については、修補・損害賠償その他
一切の責任は負わないものとする」
(例)特約・容認事項の導入文記載例
「買主は、下記の特約・容認事項を確認・承知の上、購入するものとし、下記
事項について売主に対して、解除・損害賠償・修補・代金減額請求等の
一切の法的請求をなし得ないものとする」
◎「告知書・付帯設備の完成度が売買契約書の完成度を決める」
〇契約不適合責任では、今までの瑕疵担保責任での、損害賠償請求・契約の解除
に加えて、新たに 追完請求(=直してください)・代金減額請求ができるように
なった。
☆追完請求=直してくださいという請求=改めて完全な給付を請求すること
◎個人間売買では「契約不適合責任は全部免責する」旨の契約は有効
(参考)*新民法では、瑕疵担保責任という概念自体が廃止
○瑕疵担保責任
住宅を買った後、建物や設備にすぐにはわからなかった瑕疵(目に見え
ない部分の瑕疵)発見された場合、一定期間内であれば売主に
損害賠償などを請求できること
ただし、引渡し前にその瑕疵が発生していることが前提です
対象は①雨漏り②シロアリの害③給排水の水漏れ④木部腐食
*瑕疵= キズ、欠陥、目的物が保有すべきと取引上期待される品質、性能
を欠くこと
*隠れた瑕疵=瑕疵が容易には見つからないこと。買主が通常の注意を用い
ても発見できない瑕疵のこと。
瑕疵を知らず、かつ知らないことにつき過失が無いこと。
○民法第570条(売主の瑕疵担保責任)
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、買主がこれを知らず、かつ、
そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は契約の
解除、それができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる
*契約をした目的= 中古住宅を購入し、居住することができること
○契約後問題とならない不適合
1.売主より告知された不適合
2.あらかじめ買主が知っている不適合
*買主が知っていた不適合・不備については責任を負わないことを
契約書で明記することが必要になった
3.普通の注意をしていれば知りえた軽微な不適合
上記3つに該当するものは買主様も知った上での契約になるので、
契約不適合責任は発生しません。
「言った、言わない」のトラブルを避けるため、建物や設備の状況を
書面で確認 「物件状況等報告書」「付帯設備表」など
○契約不適合責任について業者が個人に対して有効期間を定めなかったり、特約
をつけずに売却した場合
契約不適合責任の時効消滅は引渡しから10年です
「瑕疵担保による損害賠償請求権は引渡しの日から10年で消滅時効
にかかる」(平成13年11月 最高裁判決)
*契約不適合を知った時からは、5年
○仲介業者は買主様が物件購入の意思決定をするに際して、重要な意義を有
する事項に関して、過不足ない情報を提供すべきであり、それらの事項は、35
条書面に規定されている事項に限定されない。
○契約不適合の分類
①法律的不適合 法令上の制限に係る調査不足、ミス
*主に建築基準法上の要件を満たない場合
*同規模の建築ができない(既存不適格建築物)
*接道義務を満たしておらず、建築できない
*市街化調整区域の土地により、建築できない
②物理的不適合 宅地、建物の瑕疵 シロアリ、雨漏り、埋設物
*違法、危険な擁壁であることが判明した
古い擁壁(昭和40年代、高さ2mを超えるもの)注意
*軟弱地盤で建築に過分な費用が必要
*地盤沈下により建物が傾いた(傾いている)
現況有姿売買であっても不等沈下による建物の傾斜
*土台、柱などがシロアリの害を受けている
*マンションの共用部分に不適合があるときは、売主は責任を負わない
③環境的不適合 嫌悪施設、日照、眺望、騒音、臭気
*飛行場、工場、ゴミ処理場、養豚場などの騒音、臭気がひどい
*隣地の建築により日照、眺望などが阻害される
*近くの幹線道路などによる騒音など
④心理的不適合 心理的影響
*自殺、殺人事件(他殺)、心霊現象
*建物内で自殺を図り、数日後病院で死亡
*組事務所、組長など幹部の自宅がある
*組員の自宅がある
*組幹部の愛人宅がある
*近隣に迷惑行為をする人がいる
*自殺の告知義務は、7年程度を目処にしている(判例)
*心理的不適合は時間的な制限があるという考えに基づき、自殺から
少なくとも10年経過した建物を売却する場合、このことを知ったから
といって心理的不適合責任は問えない
*「霊魂」「鬼門」など、客観的、具体的な死亡事実に結びついてい
ない風評に基ずく場合も不適合の可能性あり
*自殺があった建物をどのように利用するかで結論が異なる
取り壊す場合 不適合に該当しない
永続的に居住 不適合に該当する